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おつまみ更新:ラフィアの翼3

「レクシオ」
 唐突に名前を呼ばれ、リオンと遊んでいたレクシオは目を丸くして振り返った。部屋の入口にはディオルグが笑顔で立っている。
「おじさん」
「よっ。元気そうだな。親父さんはどうした?」
 いつも通りの軽い調子で問いかけてくるディオルグ。安心感を覚える笑顔は、彼が帝都に行く前から変わっていない――はずなのだが、レクシオはそれに対して首をかしげた。言葉にできない違和感が、そこにあったのである。
「お父さんなら、お散歩だって」
 だが少年は、結局その違和感を無視した。それを見つめ、正体を考えるには、彼はあまりにも幼すぎたのである。大きな丸い瞳が、笑みを浮かべる男の顔を映す。
「そうか」
 放たれた明るい言葉には、なぜか小さな氷片(ひょうへん)が混ざっているように思えた。レクシオは、リオンの小さな手を握りながら、ますます首をひねる。だがディオルグの方はと言うと、それに気付いているのかいないのか、いつもの調子で歩み寄ってくる。
「じゃあ、ちょうどいいや。おまえさんも、少し散歩しないか?」
「え、おじさんと?」
「ああ」
 黒茶の瞳を見た少年は、少し考え込む素振りを見せる。それから、小さな声で「うん」と言った。
 ディオルグが部屋を出るのを見届けると、レクシオはリオンに「また遊ぼうね」と声をかけてから、外に出る支度を始める。――こんなに雪が降ってるのに、どうして散歩なんて言い出したんだろう。そう、思いながら。

 支度を整えたあと、レクシオとディオルグは二人して外に出た。本当は出る前に父に知らせておきたかったレクシオだが、残念ながら彼を捕まえることはかなわなかった。と言うのも、不安げに男の姿を探す少年に対し、ディオルグが「だーいじょうぶだって、そんな神経質にならなくても」と言ったのである。
 一歩家の外に踏み出すと、身を切るような寒さが襲ってくる。レクシオは上着の襟を寄せて身震いした。
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