KOLおつまみ更新12

2017.09.02 17:46|小説・詩
本編はこちら
http://ncode.syosetu.com/n3552bw/




「い、意味がわからない……」
 光貴は愕然として呟く。しかし呟いたところで何が変わるわけもなく、列をなす球体は浮きっぱなしで動かない。見ているだけで頭の痛くなってくるような、奇妙なことこの上ない光景だ。どうしよう、と悩んだ光貴は、球体の列に沿って、歩いてみることにする。一歩、二歩、三歩。そのままに進みつづけて、小さな球体の隣まで来たとき、彼はすばやく頭を押さえた。
 きん、と、頭の中で鳴り響く。なぜか、ひどく懐かしい音。それはまた、拍子を刻みはじめた。『聖墓所』のなかで、石碑を前にしたあのときのように。
 音に合わせて指が伸びる。小さな球体に向かって、手をのばす。これはだめだ、危ない、と思った。けれども、得体の知れない衝動は、恐怖をまとった理性に負けた。指の腹が玉に触れる。表面はなぜだか、硝子のようにかたくてなめらかだ。その不思議を考える前に、より高い音が、頭の中で鳴り響く。
 光貴がきつく目を閉じたとき、またしても、声がした。
『なんで私なのかしら。魔法なんて、いらないのに』
 ふてくされたような若い女性の声は、驚くほどすんなりと、光貴の中に入ってくる。声が消えたあと、光貴はそっと目を開けた。広がるのは、ただ白い空間。目の前の球体はいつの間にかなくなっていたが、列をなす球じたいは、まだ無数に存在しているように思えた。そして、耳の奥では、また、きん、きん、と鉄を打つような高音が鳴っている。光貴はうんざりしてかぶりを振った。
「ひょっとしてこれ、全部触らないといけないのか……?」
 何がなんだかわからない。それは今でも変わらないが、何かとても大きなことが起きていて、自分がそれに巻きこまれているのだとは理解できる。光貴は深くため息をつくと、数歩を刻んで、すぐ横の小さな球に、また手をのばした。
 光貴の予想したとおり、球体を触るたびに謎の声がして、その声がやむと、球体は音もなく消えうせた。そして、また、次の球体に触れるのだ。そんなことを、えんえんと続けている。時計がないどころか、まわりの風景さえまったく変わらないので、どのくらいの時間そうしていたかわからない。
 気が狂いそうな作業の中、狂わないために分析することを覚えた。光貴は、またひとつの声が消え、痛む頭を押さえる。響いてくる声の中には、いくつかに共通している言葉があった。『魔法』『継承』『力』――そして、『神聖王』『神聖姫』に、『天使』。
 光貴ははたと、歩みを止める。
「これ、ひょっとして……昔の、守護天使たちの、声?」
――それも、『神聖』の名を持つ守護天使たちの、だ。気づいた光貴は、立ちすくむ。忘れていた寒気が、足もとから脳天へはいあがってきた気がした。
 彼がもともといたのは、『聖墓所』、つまりは『神聖王』たちの墓である。死した彼らの思念に触れられたとしても何もおかしくはない、のかもしれない。それにしたって奇妙すぎるだろうと、光貴は心の中で悪態をついた。
 しかし、文句を言っていてもどうしようもない。気分の悪さを噛み殺して作業を続けた。ふと我に返ると、彼は最後のひとつの球体の前に立っていた。薄い青をまとわせる球を前に、光貴はごくりと唾をのむ。
 迷いで体が凍りつく。のばした指はどうしようもなく震える。
 この歩みを終えた先に、何があるのか。自分がどこへ行って、どうなるのか。何もわからない。怖い。戻りたい。
 それでも。
「戻りたいなら、やるしかないだろ……!」
 あえて、押し殺した声で自分を叱咤して。光貴は青い球体に、手を触れた。確かめるように、掌をくっつける。その瞬間、今までにない音が頭の中を支配した。硝子を針でひっかいたような高音に、何もわからなくなりそうになる。
 喉の奥から音が漏れたとき、おぼえがないのに懐かしい声が、そっとささやいた。
『やりたくない。行きたくない。ふつうに暮らしたかったよ。けど――俺しかできないんなら、俺がやるだけだ』
 その言葉の意味を、考えそうになって。けれど、その前に、足の下の感覚が、なくなった。

KOLおつまみ更新11

2017.09.01 21:39|小説・詩
こんばんは、七海です。気が付いたら9月になっていました。あれー?
最近、やっと漫画に手がつけられるようになってきました。とりあえず、五周年記念といいつつ六周年過ぎてもなお放置されているオムニバス漫画から描いています。ギルドのごちゃごちゃ感が懐かし楽しい。

それと並行して、ぼく冒と、そしてKOLもぼちぼち進めていきます。あと『風語り』も。こちらは現在、九話のストック溜めに入っています。
KOLの第五章が済んだら『ラフィアの翼』の続きにとりかかろうと思っているので、頑張ります。
というわけでおつまみ更新。
本編はこちらです。
http://ncode.syosetu.com/n3552bw/



 光貴はゆるりと、重い瞼をこじ開けた。とたん、白い光が四方八方からさしこんでくる。きつく目を閉じ、まばたきを繰り返す。朝の寝起きに似た倦怠感を引きずりながら起きあがった彼は――そのまま、凍りついた。
 目の前が、ただひたすらにまっしろだった。終わりなど見えない。後ろを見ても、白しかない。手をかざしてみても、自分の肌色がいつもより薄く見えるだけだ。そろり、と足を動かしてみたとき、足もとまでもがどこまでも白いことに気がついて、さすがにぎょっとした。
「う、うわあああ!? なんだこれ、なんだこれ!」
 叫んで飛び退ってみたものの、何も起きない。彼はぶざまによろめいてから、膝に手をついた。
 足の下に『地面』はない。だが、不思議と底なし沼へ落ちてゆくようなことはなく、靴底からは王城の廊下を思い起こさせるかたさが伝わってきた。何がなんなのか、まったくわからない。ここはどこなのか。そもそも、晴香やラッセルやノエルはどこに行ったのか。
「いや……あいつらがどっかに行ったというよりも、俺がどっかに飛ばされたのかな?」
 首をかしげる。思ったことを言葉にして、はじめて目ざめる前のことを思い出した。聖墓所の中で妙な音を聞き、石碑に触れていたらいきなり目の前がまっしろになったのだ。そして気づけば、あのときの光とまったく同じ、果てのない純白の中にいる。
「なんなんだろう、これ。俺、出られるのかな?」
 形を持たない不安は確かにそこにある。光貴は胸がうずくのを感じて、顔をしかめた。
 目を閉じる。音のない逡巡のあと、大きく息を吸うと、はずみをつけて体を起こした。
 不安は不安だ。けれど、いつまでも立ち止まっていては、何も始まらない。ひとまず出口を探そう、と、光貴は歩き出した。
――あたりは本当に、ひたすらに白かった。小石のひとつも落ちていない。そもそもここは、本当に存在する場所で、自分は本当に、今までいた世界の中にいるのだろうか。首をひねる。靴を高らかに鳴らし、独り言をぽつぽつと道にこぼしながら、なんとか少年は歩き続けていた。
 気が狂いそうな無の時間は、唐突に終わりを告げる。光貴は、ふと目をすがめた。遠くに、何か丸い物が浮いてるように見える。水の泡にも似たそれは、この場にあってなお、「現実離れしている」ような感覚を抱かせる。それでも、光貴にとっては間違いなく、希望だ。彼はぱあっと顔を輝かせ、浮かんでいる球体に近寄る。
 光貴の顔くらいもある玉は、やはり水泡によく似ていた。丸のなかで、虹色が揺らぎながら泳いでいる。ふつうの水泡と違うのは、わずかに青みがかかっていることだろうか。光貴は、しばらく黙ってそれを凝視していたが、やがて腕を持ちあげた。
「とりあえず、今のところ、手がかりはこれしかない……よな?」
 噛みしめるように。確かめるように呟いて、指先を球体の表面にすべらせる。
 耳の奥で、音が弾けた。

『――ずいぶんと、手間のかかるつくりにしたものだな』
『“神聖王”などと、呼ばれるようになるくらいには、我らは強い力を持っているということだ。力を持つ者には責任が生じ、覚悟を求められる。違うか?』

「――え?」
 光貴は、目をみはった。あたりを見回してみるが、もちろん彼以外に人などいない。先程の音の残響すら、彼の中には残っていなかった。
 今のはなんだと、深く考えそうになる。けれど、ひどく非現実的な現実は、そのひまさえ与えてくれなかった。
 異変は、終わっていなかったのである。
 目の前にふよふよと浮かんでいる球体が、突然、小刻みに震えはじめる。光貴の手が触れている部分から、ぐわんぐわんと揺らいで、波紋が全体に広がると、ぱんっ、と弾けた。
「うわっ!?」
 光貴はとっさに、両手で顔を覆う。その間にも、球体だった飛沫はそこかしこに飛び散った。
 激しい水音のあと、また、もとのように何も聞こえなくなる。もういいかな、と覆いを外した光貴は、そのまま言葉を失って立ち尽くすはめになった。
 飛び散った球体の欠片が、いつのまにか無数の小さな球体となっている。それらはふよふよと宙に浮いて、道をつくるかのように、一列に並んでいた。

光陰矢のごとし

2017.08.20 16:34|更新情報
七海です。イラスト載せたかったけど時間が……後から追加するかもしれません。

なんとなんと、誕生日から九日過ぎてのブログ更新。初盆やら手続きやらで、どったばったしている間に、お祝いムードなんぞどこかへすっ飛んでいってしまいました。
ともあれ、「山の日」で二十歳になりました。皆様、これからもよろしくお願いします。

さて。本家の方では、『風語り』の幕間のもう一編・風の章を更新しました。文字数がWEB小説じゃねえよごるあああ! というくらいにふくれあがってしまいました。細切れにしたくなかったのです。ご容赦ください。

それと、今回の更新にともない、サイトデザインを微妙に変えました。CSSをいじっているので、Ctrl+F5(Windows)を押してからご覧になってください。

ご来訪と拍手、ありがとうございます。

久々に日常のお話を

2017.07.29 17:56|日常
適当すぎるあの娘の落書き
だーれだ?(ヒント:ぼく冒)
正解した方は私と友達になってください。

こんにちは、七海です。やっぱりしちみって打ちそうになる助けて。

七月が終わりますねー。はやいですねー。
誕生日とブログ開設記念日もうすぐだぜへへーいと謎のテンションになっています。

異常な暑さでさすがの私も死にそうになったり、HTMLに興味あるんですーと事業所でこぼしたらDreamweaverを触らせてもらって中毒になりそうになったり、事業所に体験実習に来た人がめちゃくちゃ絵がうまくて対抗心が燃え上がったり、家族が北海道に旅行して帰ってきたり、モンスター級のスイカが我が家に届いて、急にそれをクロッキーしてみたり――といろいろあったここ最近です。
今日は椅子をクロッキーしてみようかと。椅子を上手に描くことって絵描きの永遠の課題だと思っているのですが、私だけでしょうか。

そろそろサイトのコンテンツも何かしら更新したいのですが、何からにしよう……。実は、『風語り』の幕間のもう一話にかなり苦戦しています。その間にもストックが溜まり続け、第八話が終わりそうです。
50のお題とかAZUREとか、急に描きだすかもしれません、よろしく。あ、それかイラストですかね。でもイラストをのんびり描いている余裕もないという……それやるくらいだったら漫画描く……というのが現在の気持ちなので、どうなるかわかりませんぬ。

Dreamweaverのテキスト二冊目終わるくらいには、サイトの改装も頑張ってみようかなと思っています。そんな時間があればの話ですが。

記録的な暑さが続いたり、いろいろ物騒なことがあったりする世の中ですが、私も皆様も、体調に気をつけて夏を過ごしましょう。
暑ささえ気にしなければ、夏はすばらしい季節だと思うのです! そう思うのは私が8月生まれだからでしょうか。

ご来訪と拍手、ありがとうございます。

久々に本格的な

2017.07.17 13:32|更新情報
ぼく冒でこぼこ三人衆

こんにちは、七海です。何か絵が欲しかったので、少し前の落書きをひっぱりだしてきました。
「カクヨム」さんで現在Ⅲを執筆中のぼく冒から主人公's出張。
アニーは、きっと認めようとしませんが、かなりロトになついてます。

サイトにもぼく冒絵を一枚公開しましたー。リハビリついでにコピックでごりごりごり。
もう一枚ごりごりしているやつがあるのですが、仕上げにアクリル絵の具を使うので、待機中。
そして、ものはついでとばかりに、カテゴリ独立させました。これからモリモリ作品が増える予定です。


(更新分についてだらだら語る)
あれです。鬱系です。私の場合、ときどきすごく、めっちゃいい笑顔が描きたくなるか鬱系が描きたくなるかします。両極端ですね。
線画を鉛筆にするためにいろいろと工夫をしてみたところであります。
ちなみに文字は本文の引用ではありません。
コピック久々すぎて、インクが切れていたりニブが固まっていたりして大変でした。

で、何このシチュエーション……というところを長々と語ってみます。
ぼく冒本編に関しては、私の作品群のなかでは割合ゆるいノリで書いています。実際、執筆開始当初は児童文学を目指していました。
……目指していたんです!
しかし、ロトやマリオンら――作者の中では「魔術師組」とか「青年組」とか呼んでます――の来歴に、児童文学で出しちゃだめだろこれ! というくらい壮絶な要素が加わってしもた。予定より重くなってしまったのはこれが主な原因だと思っています。
ぼく冒では取り扱いきれないため、結局、『学術都市の片隅から』で補足をしていくことにしました。

今回の絵はその一部をぼんやり表現したものです。『学術都市…』を追ってくださっている方ならぴんとくる、かも。

彼もただヒネているわけではないのです……たぶん。
そんな感じのイラストでした。
まあ次は明るめの絵が来るかなと思いますのでよろしくお願いします。

ご来訪、拍手等ありがとうございます。
漫画描きたいいい!
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Author:蒼井七海
なんか周りにオタクといわれてしまう社会人見習い。
少年漫画、ファンタジー、ネコが大好き。中学生の頃から息(だけ)長く創作サイトの運営やらなんやらしながら、漫画家を目指しています。
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